「広がる治療の選択肢〜薬物療法を中心に」
自分の主治医が講演をするということで、たまたまこの会を知り聞いてきました。
普段は、現行の治療法、経過などを中心に話をしているということでしたが、
今回は珍しく、今後の治療法について、
現在治験が行われている薬についての話が大半でした。
そういった話は、製薬会社がどうこう、といった問題もあったりしてなかなかやらないとのこと。
全国規模でもまだないみたいなので、
非常に興味深い話でした。
以下内容
1、正常時と活動期の腸の様子
内視鏡の写真
腸管の構造(内側から粘膜層、粘膜下層、固有筋層、奬幕層)
両疾患の共通の発症メカニズム〜炎症細胞が潰瘍を形成する。
・クローン病の発症モデル
炎症細胞が表面から奬幕層まで達し、結果深い潰瘍が形成、突発的な出血、穿孔、狭窄等が起きる。
・潰瘍性大腸炎の発症モデル
粘膜層、粘膜下層の表面付近で炎症細胞にいる。結果、にじむような出血、粘血便といった症状。
2、現行の治療法
緩解維持と、緩解導入。
3、炎症性疾患に対する近未来療法
現在治験が行われている13の薬について
・治験の流れ
基礎研究→フェーズ1〜3→申請→承認審査(2〜3年)→承諾
最初は健康な患者からフェーズ1で始まるらしい。
・腸管で起こっている炎症のしくみを簡単にストーリー仕立てにすると、
a.先遣隊(樹状細胞)が報告する。
b.指揮官(T細胞)が戦車隊に命令する。
c.戦車隊(マクロファージ)が歩兵隊に要請する→炎症を起こす。
d.歩兵隊(好中球)が実際に実弾を撃つ。→炎症を起こす。
e.上記の流れとは別に、これらの流れを制御するT細胞もいる。
となる。
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a.へのアプローチ。
最前線の実働部隊を押さえるもので、実際は活性酸素を除去するような働きをする。日本独自で新しい展開らしい。
両者ともUC用、いい結果が出ているところらしい。
『レバミピド注腸療法』(胃で使われていたのを注腸式にして直接患部に届けよう。)
『レシチン化SOD』(点滴、強力な活性酸素の消去という作用をもつ。)
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b.へのアプローチ
実働部隊の暴走を押さえる。
両者ともUC用、いい結果が出ている。
ようは、効果的に大腸で薬が効くようにしている。
『メサラジン時間依存型徐放剤増量』(経口)(試験終了)
『メサラジンpH依存型徐放剤2種類』(経口)(腸のpHに合わせて作ってあるため、胃を通り過ぎて腸に来る。)
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c.へのアプローチ
指揮官:T細胞を押さえ込む。
UC.『タクロリスム水和物(免疫調整材)』(経口カプセル)(サイトカインの発生を押さえる)
ステロイドがうまくいかない人に効果があるとの報告。
CD.『タミバロテン』(経口錠剤)(ようはいろいろなT細胞(指揮官)のバランスを調整できるらしい。)
バランス調整に加え、腸上皮のバリアを強化する。
eの制御性T細胞の働きが増える、今までとは仕組みの違う新しい薬らしい。
CD.『プデソニド』(経口カプセル)(軽度、中度の病変に。)
腸だけにきくステロイド、海外では既に発売済み。
ステロイドはa~e全てに効果をもたらす→副作用も存在する。
安全性あり。
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b~dの通信機能、伝達系へのアプローチ
CD.UC『インフリキシマブ』(レミケード・点滴・CD認可済み・UCフェーズ2)
CD. 『アダリムマブ』(皮下注射・1回/2週)(ヒト型抗体・副作用も起こりにくい)
そのうち自己注射も。レミケードと変わらない効果が期待。
欧米では承認済み、自己投与も認められている。
CD. 『セントリズマブ ペゴル』(皮下注射・最初3回/2週、その後は1回/4週)
欧米では認可済み
上記3つの抗TNFα製剤の臨床的効果は余りかわらない。
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腸管に炎症性細胞を入らないようにするアプローチ
CD.『アダカラム』(GCAP*血球成分除去療法)
『AJM300』(リンパ球が組織中に侵入することをおさえる*経口)
4、炎症性腸疾患に対する治療のさらに将来への展望
上記の炎症のメカニズム以外について〜食事や腸内細菌
さらには遺伝的素因、環境因子などについての研究。
以上に簡単にまとめ。
世界では13以上、たくさんの薬の治験が進んでいるとのこと。
ここ2〜3年で治療法が劇的に変化してきて、なんだか未来は明るいような気も。
いつか食べたいもの食べて、お腹もいたくならない時がくるのかな。
なんて思ってもよさそうかな、と思いました。
2008年6月22日日曜日
ちばIBD講演会
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- Daisuke Fujita
- 大学院生。クローン病。