2008年6月22日日曜日

ちばIBD講演会

「広がる治療の選択肢〜薬物療法を中心に」

自分の主治医が講演をするということで、たまたまこの会を知り聞いてきました。

普段は、現行の治療法、経過などを中心に話をしているということでしたが、
今回は珍しく、今後の治療法について、
現在治験が行われている薬についての話が大半でした。

そういった話は、製薬会社がどうこう、といった問題もあったりしてなかなかやらないとのこと。
全国規模でもまだないみたいなので、
非常に興味深い話でした。


以下内容

1、正常時と活動期の腸の様子

内視鏡の写真

腸管の構造(内側から粘膜層、粘膜下層、固有筋層、奬幕層)

両疾患の共通の発症メカニズム〜炎症細胞が潰瘍を形成する。

・クローン病の発症モデル
炎症細胞が表面から奬幕層まで達し、結果深い潰瘍が形成、突発的な出血、穿孔、狭窄等が起きる。

・潰瘍性大腸炎の発症モデル
粘膜層、粘膜下層の表面付近で炎症細胞にいる。結果、にじむような出血、粘血便といった症状。


2、現行の治療法

緩解維持と、緩解導入。


3、炎症性疾患に対する近未来療法

現在治験が行われている13の薬について

・治験の流れ

基礎研究→フェーズ1〜3→申請→承認審査(2〜3年)→承諾
最初は健康な患者からフェーズ1で始まるらしい。


・腸管で起こっている炎症のしくみを簡単にストーリー仕立てにすると、

a.先遣隊(樹状細胞)が報告する。
b.指揮官(T細胞)が戦車隊に命令する。
c.戦車隊(マクロファージ)が歩兵隊に要請する→炎症を起こす。
d.歩兵隊(好中球)が実際に実弾を撃つ。→炎症を起こす。
e.上記の流れとは別に、これらの流れを制御するT細胞もいる。

となる。

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a.へのアプローチ。

最前線の実働部隊を押さえるもので、実際は活性酸素を除去するような働きをする。日本独自で新しい展開らしい。

両者ともUC用、いい結果が出ているところらしい。

『レバミピド注腸療法』(胃で使われていたのを注腸式にして直接患部に届けよう。)

『レシチン化SOD』(点滴、強力な活性酸素の消去という作用をもつ。)


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b.へのアプローチ

実働部隊の暴走を押さえる。

両者ともUC用、いい結果が出ている。
ようは、効果的に大腸で薬が効くようにしている。

『メサラジン時間依存型徐放剤増量』(経口)(試験終了)

『メサラジンpH依存型徐放剤2種類』(経口)(腸のpHに合わせて作ってあるため、胃を通り過ぎて腸に来る。)


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c.へのアプローチ

指揮官:T細胞を押さえ込む。

UC.『タクロリスム水和物(免疫調整材)』(経口カプセル)(サイトカインの発生を押さえる)
ステロイドがうまくいかない人に効果があるとの報告。

CD.『タミバロテン』(経口錠剤)(ようはいろいろなT細胞(指揮官)のバランスを調整できるらしい。)
バランス調整に加え、腸上皮のバリアを強化する。
eの制御性T細胞の働きが増える、今までとは仕組みの違う新しい薬らしい。

CD.『プデソニド』(経口カプセル)(軽度、中度の病変に。)
  腸だけにきくステロイド、海外では既に発売済み。
ステロイドはa~e全てに効果をもたらす→副作用も存在する。
安全性あり。


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b~dの通信機能、伝達系へのアプローチ

CD.UC『インフリキシマブ』(レミケード・点滴・CD認可済み・UCフェーズ2)

CD. 『アダリムマブ』(皮下注射・1回/2週)(ヒト型抗体・副作用も起こりにくい)
    そのうち自己注射も。レミケードと変わらない効果が期待。
    欧米では承認済み、自己投与も認められている。
 
CD. 『セントリズマブ ペゴル』(皮下注射・最初3回/2週、その後は1回/4週)
欧米では認可済み

上記3つの抗TNFα製剤の臨床的効果は余りかわらない。


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腸管に炎症性細胞を入らないようにするアプローチ

CD.『アダカラム』(GCAP*血球成分除去療法)

『AJM300』(リンパ球が組織中に侵入することをおさえる*経口)



4、炎症性腸疾患に対する治療のさらに将来への展望

上記の炎症のメカニズム以外について〜食事や腸内細菌

さらには遺伝的素因、環境因子などについての研究。



以上に簡単にまとめ。

世界では13以上、たくさんの薬の治験が進んでいるとのこと。

ここ2〜3年で治療法が劇的に変化してきて、なんだか未来は明るいような気も。

いつか食べたいもの食べて、お腹もいたくならない時がくるのかな。
なんて思ってもよさそうかな、と思いました。

ラベル

自己紹介

大学院生。クローン病。